信用取引の流れ

信用取引口座の開設

契約締結前交付書面

金融商品取引業者等は、顧客と金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ当該顧客に対して、法令に定める事項について記載された書面(契約締結前交付書面)を交付し、顧客に信用取引に伴うリスクについて十分説明をしなければなりません。

信用取引開始基準の設定

金融商品取引業者等は、信用取引開始基準を定めて顧客の投資経験や顧客からの預かり資産などを審査した上で、信用取引口座の開設を承諾することになります。なお、金融商品取引業者の役員又は従業員の信用取引は禁止されています。

信用取引口座の開設

顧客が信用取引を行う際には、取引所が定める様式による「信用取引口座設定約諾書」の所定事項に顧客自らが記載し、署名又は記名押印して金融商品取引業者に差し入れなければなりません。

信用取引の種類の確認

金融商品取引業者は、顧客から信用取引による委託注文を受ける際には、その都度、顧客からその注文が信用取引である旨の指示を受けなければなりません。その指示がない注文では、信用取引として受けることはできません。

また、顧客から信用取引の注文を受ける際には、その都度、その注文が制度信用取引によるものか、一般信用取引によるものかについて当該顧客の意向を確認しなければなりません。なお、信用取引の売買単位は、上場会社が定めた1単元の株式数となっています。

委託保証金

金融商品取引業者は、信用取引による約定が成立したときには、顧客から一定の委託保証金を受け入れなければなりません。この委託保証金は、有価証券をもって代用することができます。

委託保証金

委託保証金の差入れ

信用取引による売買が成立したときは、売買成立日から起算して3営業日目の日までの金融商品取引業者が指定する日時までに、約定価額の30%以上の委託保証金を金融商品取引業者は、顧客から徴収しなければなりません。

なお、金融商品取引法等においては、委託保証金の最低限度額は30万円と定めていますので、約定価額の30%が30万円に満たない場合の必要保証金額は30万円となることに注意してください。

保証金代用有価証券と代用掛目

委託保証金は原則として現金の差入れとなっていますが、現金の代わりに有価証券をもって代用することが認められています。代用された有価証券のことを代用有価証券といいます。代用有価証券の評価は、差し入れた前日の直に下記表にあげられている所定の現金換算率代用掛目)を乗じて算定します。

代用有価証券の種類 代用掛目
国内取引所に上場されている株式 80%
国債証券 95%
地方債証券 85%
国内取引所に上場されている社債券 85%
国内取引所に上場されている新株予約券付社債券 80%
国内取引所に上場されている外国国債証券 85%
国内取引所に上場されている外国地方債証券 85%

 

信用取引の金利及び信用取引貸株料

金利については、従来、制度信用取引の場合には、取引所が一律に定めていましたが、1999(平成11)年より自由化されたことにより、一般信用取引と同様に金融商品取引業者と顧客との合意により決定されることになりました。

2002(平成14)年5月より導入された信用取引貸株料は、売り手が株式の借り入れに伴う費用として金融商品取引業者に支払うものであり、買い方と売り方の負担すべき費用の公正化を図ることを目的としています。

買い方:顧客は、融資を受けた金銭に対する金利を金融商品取引業者に支払います。

売り方:顧客は、売却代金に対する金利を金融商品取引業者から受取り、信用取引貸株料を金融商品取引業者に支払います。

追加保証金(追い証)

信用取引により買いつけた株式の値下がり又は、売りつけた株式の値上がりによって損失が生じた場合、委託保証金の価値が減少します。委託保証金は、信用取引の担保ですので、その価値が減少した場合には、その減少分の穴埋めを行わなければなりません。委託保証金には、最低維持率が定められていますので、委託保証金の価値がその最低維持率を割り込んだ場合には、委託保証金を追加で差し入れなければなりません。委託保証金を追加で差し入れることを追加保証金(追い証)といいます。

最低維持率は、約定価額の20%とされています。この維持率は最低基準ですので、金融商品取引業者が任意で20%以上の維持率を定めることができます。なお、顧客は追加保証金を損失計算が発生した日から起算して3営業日目の日までの金融商品取引業者が指定する日時までに、追加保証金を差し入れなければなりません。

追加保証金の計算は、下記計算式で算定されます。

① 受入委託保証金-(評価損+信用取引に関する立替金)=受入委託保証金の残額

② 約定価額×委託保証金の維持率20%=維持率20%の委託保証金

③ 追加保証金が必要となる場合=①<②

④ 追加徴収しなければならない委託保証金=②-①

信用取引の弁済期限と決済

返済期限

金融商品取引業者が顧客に貸し付ける金額は、顧客の差し入れた保証金と約定金額との差額ではなく、約定金額又は売付有価証券です。信用取引による買付代金及び売付有価証券の弁済期限は、貸付日(約定日から4営業日目の受渡日)の翌日とされています。その3営業日目前の日(約定日の翌日)までに顧客から金融商品取引業者に対し、弁済の申し出がない場合には、逐日、弁済期限が繰り延べられます。

制度信用取引の場合には、売買成立日の6ヵ月目の応当日から起算して4営業日目の日を超えて繰り延べることはできません。一般信用取引の場合には、顧客と金融商品取引業者との間で自由に弁済期限を決めることができます。

決済(弁済)

顧客が信用取引の決済を行う方法としては、受渡決済と差金決済の2つの方法があります。

受渡決済(現引き・現渡しによる決済方法)

買い方:融資相当額を金銭で返済し、融資の担保となっている買付株式を引取り決済します。

差引支払金額=買付代金+委託手数料(消費税相当額を含みます。)+金利ー品貸料

売り方:売付株式と同種同量の株式を返済し、貸し株の担保となっている金銭を受取り決済します。

差引受取金額=売付金額-委託手数料(消費税相当額を含みます。)+金利ー信用取引貸株料-品貸料

差金決済

買い方:株価値上がり時には、売却代金と融資額との差額を受け取ります。株価値下がり時には、売却代金と融資額との差額を支払います。

差引受払金額=差損益-委託手数料(消費税相当額を含む。)-金利+品貸料

売り方:株価値下がり時には、売却代金と株価の差額を受け取ります。株価値上がり時には、売却代金と株価に差額を支払います。

差引受払金額=差損益ー委託手数料(消費税相当額を含む。)+金利ー信用取引貸株料=品貸料

権利行使

配当落ちの場合

金融商品取引業者は、顧客の売建株又は買建株が未決済の時に、当該株式が配当落ちとなった場合には、発行会社が支払う剰余金の配当の確定後、税引後の配当金相当額を配当落調整額として、売り方から徴収し、買い方に支払います。

株式分割等により株式を受け取る権利が付与された場合

金融商品取引業者は、制度信用取引によって顧客の売建株又は買建株が未決済の状態の時に、当該株式が権利落ちとなった場合には、原則として、取引所が定める株式分割等による株式を受ける権利等の価額(権利処理価額)に相当する額の金銭を売り方から徴収し、買い方に支払います。

売り方:権利処理価額を約定価額から減額することで、顧客は新株のプレミアム相当額を支払ったことになります。

買い方:新株式等の引受けを選択した場合には、権利処理価額に相当する金銭を支払って、買付代金を減少させ、引換えに権利を取得します。また、代金決済を選択した場合には、株式分割等によって、顧客の買付額に対して割り当てられた株式を受ける権利の売却処分を顧客が委任して、その売却代金(権利処理価額)で買付代金の一部を決済することになります。

 

 

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