第149回 簿記検定2級(その他有価証券に関する税効果会計)

第149回 その他有価証券に関する税効果会計

なぜ適用するのかの理屈は難しい。

第148回の簿記検定試験が終了し、簿記3級の合格の手応えがあった方は、早速、この6月に実施される第149回簿記検定試験の2級の挑戦されることでしょう。第149回からは連結会計のアップストリーム税効果会計製造業会計などが追加論点として出題されます。第148回検定試験のネットスクールさんの解答速報会で担当講師が、6月の検定試験では、新しく追加される論点として「その他有価証券の税効果会計」が出題されるのでは。。。というお話をされていました。その論点が、出題されるかどうかは、あくまでも予想にすぎませんし、その他有価証券の税効果会計の処理そのものはそれほど難しくないと思います。

しかし、なぜ、その他有価証券も税効果会計を適用するのかということについては、あまり理解されていないのではないかと思うのです。なぜなら、その他有価証券を時価評価(全部純資産直入法)することによって生じる、簿価と時価との差額は、その他有価証券評価差額金a/cという純資産に分類される勘定で処理されるからです。

おそらく税効果会計を教える側は、会計上の利益は収益と費用が対応されて計算されているにもかかわらず、法人税、住民税及び事業税は、税法上の益金と損金の差の課税所得から計算されるため、そのままでは損益計算書上、税引前当期純利益と法人税、住民税及び事業税が対応されないことになります。そのため、税効果会計を適用することによって、税引前当期純利益と法人税、住民税及び事業税を適切な対応関係に保つようにするのです。といったような説明がなされると思うのです(現に私もそうです)。

税効果会計の目的と一時差異

税効果会計に係る会計基準には、税効果会計の目的を次のように示しています。

税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である(税効果会計に係る会計基準第一)。

また、財務会計の定番本の一つである桜井久勝教授の「財務会計講義」には、次のように書かれています。

会計利益と課税所得の間の期間差異は、損益計算面だけでなく、資産・負債の金額についても不一致をもたらす。(財務会計講義第17版P.225)。

確かに、会計上と税法上で貸倒引当金繰入額に違いが生じた場合や、減価償却費の算定の違いが生じた場合などは、損益計算面だけでなく、その計算の違いによって、関連する資産・負債も異なる点は理解しやすい。しかし、その他有価証券の時価評価(全部純資産直入法)は、期間損益には影響しないのです。その点で、その他有価証券の税効果会計の適用の理解が難しいのです。

税効果会計が適用される一時差異について税効果会計に係る基準では、次のように示しています。

一時差異とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいう(税効果会計に係る基準第二・一・2)

その他有価証券は会計上では時価評価されて、税法上では原価評価されるため、資産の額がそれぞれ異なるため、税効果会計を適用しなければならないと納得し、覚えてしまったらそれまでなんですが。。。

なぜ適用するのかの理由

例えば期中にその他有価証券を100円で取得し、決算日にその有価証券の時価が150円であった場合、税効果会計を無視して処理を行うと下記のようになります。

その他有価証券 50 その他有価証券評価差額金 50

 

この場合、会計上も税法上も利益の金額に差異は生じませんので、法人税等調整額を計上する必要はありません。しかし、資産の科目であるその他有価証券は、会計上では150円と時価評価されていますが、税法上では100円と原価評価されることによって50円の差が生じています。

仮に今の時点でその他有価証券を200円で売却したとすると、会計上では下記の処理を行うことになります。

現金預金 200 その他有価証券 150
    有価証券売却益 50

 

なお、税法上では下記の処理を行うことになります。

現金預金 200 その他有価証券 100
    有価証券売却益 100

 

税率を40%とみなすと、会計上の税金額は50円×40%=20円と計算され、税法上の税金額は100円×40%=40円と計算されます。税金については、差額の20円を会計上で計算された額よりも将来多く支払わなければなりません。

上記の例では、貸借対照表のその他有価証券は150円として計上されます。このことは原価評価される税法上の金額と比べて、将来的に会計上で計算される税金の金額よりも多く税金額を支払うことを意味します。貸借対照表には、期末時点におけるお金をもらう権利やお金を支払う義務といったものを全て計上しなければなりません。そのために、その他有価証券についても決算時に下記のような税効果会計を考慮した処理を行うことになるのです。

その他有価証券 50 繰延税金負債 20
    その他有価証券評価差額金 30

 

上記仕訳の貸方(繰延税金負債)は、会計上で計算された額よりも将来多く支払わなければならない税金額を表します。

その他有価証券に関する税効果会計の処理については、他の税効果会計の処理と異なり、法人税等調整額が出てきませんので、少し分かりづらいかもしれません。長々と書いてしまいましたが、ご参考まで。

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