これでいいのか、日本商工会議所!(簿記検定試験を通じて)

これでいいのか、日本商工会議所!

商業簿記と工業簿記の難易度の差

ここ数日、ある企業からの依頼で簿記2級と簿記3級の過去問題の校閲作業を行っていました。この校閲作業を通じて感じたのが、簿記2級では、商業簿記と工業簿記の難易度の差がむちゃくちゃ広がっているということです。6月より商業簿記では新たに連結会計のアップストリーム税効果会計そして製造業会計などが加わります。そのことからも商業簿記と工業簿記との難易度の差は今まで以上に広がってくると思います。「それでいいのか、日本商工会議所!」と言いたい。

商業簿記と工業簿記

商業簿記は、商品販売業の帳簿記入を学習し、工業簿記は、製造業の帳簿記入を学習します。商業簿記でも工業簿記でも複式簿記の原理に基づいて、日々の取引を記録し、その記録結果から損益計算書や貸借対照表を作成することで、企業外部の人たちに企業の取引内容を報告するという点においては全く同じです。

しかし、商業簿記と工業簿記とで大きく異なる点は、商業簿記が外部取引のみを記録する(本支店会計は除く)のに対して、工業簿記は内部取引の記録まで行うということです。そのことは、商業簿記で作成した損益計算書上、売上総利益の計算は、単純に売上高から売上原価を差し引くことで計算できるのに対して、工業簿記で作成した損益計算書上、売上総利益の計算は、売上高から差し引かれる売上原価を内部取引の結果で算定した当期製品製造原価というものを計算しなければ算定できないことからも理解できると思われます。また、工業簿記には、製品の製造原価を算定するために必要な原価計算と密接に結び合っています。

原価計算の目的

原価計算の主たる目的については、原価計算基準1に5つの目的が示されています。少し長いですが、引用しておきたいと思います。

(財務諸表作成目的)

(一)企業の出資者、債権者、経営者等のために、過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。

(価格計算目的)

(二)価格計算に必要な原価資料を提供すること。

(原価管理目的)

(三)経営管理者の各階層に対して、原価管理に必要な原価資料を提供すること。ここに原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。

(予算編成・予算統制目的)

(四)予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供すること。ここに予算とは、予算期間における企業の各業務分野の具体的な計画を貨幣的に表示し、これを総合編成したものをいい、予算期間における企業の利益目標を指示し、各業務分野の諸活動を調整し、企業全般にわたる総合的管理の要具となるものである。予算は、業務執行に関する総合的な期間計画であるが、予算編成の過程は、たとえば製品組合せの決定、部品を自製するか外注するかの決定等個々の選択的事項に関する意思決定を含むことは、いうまでもない。

(計画設定目的)

(五)経営の基本計画を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること。ここに基本計画とは、経済の動態的変化に適応して、経営の給付目的たる製品、経営立地、生産設備等経営構造に関する基本的事項について、経営意思を決定し、経営構造を合理的に組成することをいい、随時的に行われる決定である。

 

原価計算は、確かに製品の製造原価を適切に算定し、財務諸表を作成するという大切な目的があります。しかし、現代においては、企業戦略の策定と遂行に大きく関わるツールとしての重要性が高まっているのです。

原価計算は、製品の価格を算定するために原価を計算するという固有の目的のほか、財務諸表を作成するという目的も重要である。しかしながら、現代における原価計算の重要性は、とりわけ原価計算を活用して企業活動を計画しコントロールするため、いまや企業にとって欠かせないマネジメントのツールであるということに求められる(原価計算 櫻井通晴著P.6)。

4月より原価計算初級という新しい検定試験が実施されます。原価計算初級試験の創設趣旨では、これからの少子高齢化社会にとって大切なことは、生産性の向上であり、その生産性の向上のためには、原価計算は必須の知識であり、スキルであると述べられています。それであるならば、簿記2級の検定試験についても商業簿記と工業簿記の難易度のバランスは均等にすべきではないかと思うのです。ましてや帳簿記入や財務諸表の作成などは、パソコンソフトで一任できる現代においては、商業簿記よりも、経営戦略の策定と遂行のツールである原価計算の方がはるかに重要だと思うのです。

違いますかね、日本商工会議所さん。

 

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