「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)

「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)を読了

昨年出版された「銀行員はどう生きるか」(講談社現代新書)という本がとても面白かったため、同著者の浪川功さんの最新刊「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)を購入そして読み終えました。同じ時期に購入した岡内幸策さんの最新刊「銀行員の逆襲」(日本経済新聞社)と比べてはるかに読みやすく、得るところも多かった本でした。

メガバンクなどの大幅な人員削減などのニュースから多くの方が銀行業界を取り巻いている環境が厳しい状態であることをうすうす感じていることと思います。

2017年度の決算状況を見ると、預金を受け入れて、それを貸出しで運用したり、投信販売で手数料を得たりする「本業利益」を見ると、地銀の過半数が赤字となっている。52銀行が連続赤字、さらに23銀行が5期以上の連続赤字という状況だ。それら本業が赤字の地銀の多くは、有価証券投資、あるいは既存の貸倒引当金の取り崩しによる利益化などで、表面上は最終赤字につながらないように努めている。しかし基礎体力が脆弱化していることは間違いない「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)。

日銀の金融緩和政策により短期金融市場での資金運用が厳しくなっている状況の中、本業利益をあげるためには、投信販売によって手数料をあげるか、ニーズが高い分野への融資を高めるしかありません。ニーズが高い分野の融資の1つが、スルガ銀行で問題となった不動産融資です。

近年、地銀業界ではアパマンローンが積極的にセールスされてきていたし、アパマンローンの拡大が融資総額の伸びを牽引してきたようなケースすら少なくなかった。不祥事発覚以降、スルガ銀行がことさら注目されているが、これは地銀業界全体に当てはまる現象だったのだ「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)。

会社を自分の所有物とみなして行動している経営者も少なからず存在しますが、株式会社の所有者は、株式を所有している株主であることは間違いありません。その株主が当該会社に期待していることは、多くの利益をあげることであることも間違いないことなのでしょう。株価は将来予想される企業利益に反応します。将来利益が計上されると予想されれば、株価は先取りして上がりますし、反対に将来損失が計上されると予想されれば、株価はそれを先取りして下がります。業績が向上し、株価が上がれば株主総会で経営者は称賛され、業績が悪化し、株価が下がれば株主総会で経営者は非難されます。株主総会で非難されることを避けるために経営者は、何とか業績を向上させようと必死になります。しかし、今の銀行業界のように構造的な不況が生じている場合に、今までと同じやり方で収益を獲得しようと考えると、大きな弊害が生じることになります。それは過剰な営業ノルマが課せらることによって生じる不正行為や職員のモチベーションの低下です。

日常的に目標達成を迫られるなか、「顧客のため」という理想を半ば捨てて、「銀行のため」「目標達成のため」の営業活動に邁進するしかない状況に追い込まれる。そのため、数字を作るプロフェッショナルにはなれても、金融のプロフェッショナルの道は遠のいていき、疲れ果ててしまった若手社員たちは挫折して、退社しているのだ。いま、地銀業界では「3年、30%」という言葉がまことしやかに語られている。入社から3年間のうちに同期入社の30%が退社するという話である「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)。

会社の所有者である株主は、投資家とも言われます。所有者であれば、当該会社の苦悩も経営者と一緒に分かち合い、そして経営者とともに従業員全員の幸せを願い、会社をよりよくするために経営者と一緒に考えるはずです。しかし、投資家であれば、会社の利益だけを考えます。株価の上昇のみを考えます。法律に抵触しなければどんな手段を使っても収益を上げることを経営者に望み、人件費の削減のために多くの従業員を辞めさせることを経営者に望みます。そして今の銀行業界の経営者は、所有者としての株主の目を見るのではなく、投資家としての株主の目を見て経営をしているのではないのでしょうか?

マスコミの記事を通じてトップたちの発言を最も注意深く読むのは投資家ではない。もちろん、一般の読者でもない。その銀行に勤める銀行員とその家族こそ、間違えないように熱心に一字一句まで読んでいる。ところが、経営者たちは投資家、株主に向けた発言を放ち続けているばかりだ「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)。

投資家の目を見て経営するのではなく、所有者としての株主の目を見て経営するためには、経営者の強いリーダーシップが必要とされます。それができるかどうかが重要になってきます。

さらに遠藤長官は言葉を続けた。「抜本的な経営改革は、自らの任期中に決断し実現するという強い意志を、年初にあたり持っていただければと考えている。」これは、金融庁長官から発せられた言葉としては、前例のない厳しさである。「自分の任期中に恙なく過ごそうというような甘い考え方は捨てよ」と言っているのだ「銀行員は生き残れるか」(悟空出版)。

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