「機会損失」清水勝彦著(東洋経済新報社)

機会損失とは何か

企業は、最大限の利益を獲得するために自社の限られた資源を事業に振り向けなければなりません。そのために自社で策定した企業戦略が必要となります。著者は戦略の定義を下記のように示しています。

戦略とは、ある一定の目的を達成するために、ターゲット顧客を絞り込み、自社固有の強み(ユニークネス)を用いて、競争相手よりも安い、または、より価値のある商品・サービスを提供する(差別化する)ための将来に向けた計画である(本文P.2)。

戦略とは、自社固有の強み(ユニークネス)に焦点を合わせ、その部分に自社の限られた資源を投入することであるため、当然のこと、資源が投入されなくなることによって、諦めなければならない事業が生じることになります。諦めなければ生じたであろうその事業から獲得されるはずであった利益が、採用した事業から得られた利益より多くの利益を獲得する場合、その獲得できなかった利益は、「機会損失」と言われます。

著者は「機会損失」について、下記のように述べています。

目に見えること、結果がすぐに出ることにどうしてもとらわれてしまいがちな私たちの頭のどこかに、機会損失の概念を持つことで、より戦略的な意志決定と行動ができるはずです(はじめにP.6)。

目的の共有化の重要性

意思決定は、複数ある案の中から最適と思われる案を採用することです。企業経営は意思決定の連続であるため、ある案を採用することによって、他の案は諦めなければなりません。そこに「機会損失」が生じる可能性が出てきます。しかし、採用しなかった案は、あくまでも実際に採用していない案のため、実際に採用した案と比べて「機会損失」が本当に生じているかについては、後になってみなければわかりません。なぜなら、経営者はその時点では適切なことと考え意思決定をするはずであり、間違ったことと思って意思決定する人はいないはずですから。

著者は下記のように述べます。

結局のところ「優先順位」の間違いが「機会損失」の大きな根っこの問題です(本文P.216)。

優先順位を重要性と緊急性のどちらを重視すればよいのか。著者は、企業は重要性が高く緊急性が低い案件と、重要性が低く緊急性が高い案件の2つがある場合、本来は「重要性」で判断すべきだが、多くの場合「緊急性」が勝ってしまうと述べています(本文P.218)。また、何が重要かそもそもわからないとも述べています(本文P.219)。

企業にとって利益を獲得することは、とても重要なことですが、利益を獲得することは当該企業の目的(企業ビジョンなど)を達成するための一手段であることは忘れてはなりません。利益を獲得すること以上に重要なことは、目的が共有化されることなのです。しかし、多くの企業において目的が共有されていない。そのことについて、著者は下記のように述べています。

「見えること」と「手段」にどうしても注意が行ってしまい、いつの間にか「見えない」大切なこと、つまり、目的がなおざりになってしまうということであると思います。さらに言えば、「目的が大切なのは明らかだから、そんなことは言わなくてもわかっているはずだ」ということで、そもそもあからさまに議論をしないということもあると思います(本文P.221)。

企業の目的の共有化が「機会損失」を防ぐうえで最も大切なことであり、そのために必要なこととして著者は下記のように述べています。

目的を共有する王道は、できるだけ明確にし、何度も何度もコミュニケーションをとり、確認することです(本文P.224)。

企業におけるコミュニケーションの重要性については、著者の他の著書においても、多く述べられています。それだけ、コミニュケーションというものの難しさを感じることができるのです。

 

 

 

 

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