「生産性」伊賀泰代著(ダイヤモンド社)

生産性=成果÷投入量

生産性は、成果÷投入量で計算されます。この計算式でわかるとおり、生産性を高めるためには、分子である成果を大きくするか、分母である投入量を少なくすることが考えられます。分子の代表的なものである売上高は簡単には大きくすることは難しいため、必然的に分母の代表的なものである人件費を抑えることが、手っ取り早い生産性の向上方法と考えられています。

人件費の削減には人員整理や正社員から非正社員の採用への移行などを通じて行われます。仮に1,000万円の売上をあげるために正社員2人(金額ベースで500万円)が関わっているとすると、生産性は1,000万円÷500万円=2と計算されます。それを正社員1人で1,000万円の売上をあげるとすると、生産性は、1,000万円÷250万円=4と計算されることになります。しかし、この計算式では人員を2人から1人に変えたとしても売上高の1,000万円は変わらないことが前提としてあります。人員を2人から1人に変更した結果、売上高も1,000万円から500万円に変わってしまえば、生産性も500万円÷250万円=2と計算されることになり、投入する人員を減らした結果、それに伴い売上高も減少してしまうと生産性は全く変わらないこととなります。そのため、投入する人員を減らしても成果は変わらないようにするための工夫が必要になります。

しかし、投入する人員を減らして成果があがるような工夫ができるのであれば、投入する人員を減らさずに成果をあげることが可能となるはずです。つまり、投入する人員2人は変わらずに成果があがるような工夫を施した結果、成果が2,000万円になれば、生産性は2,000万円÷500万円=4となることになります。そのためには、業務の改善あるいは革新(イノベーション)が必要となります。

業務の革新(イノベーション)

業務の革新(イノベーション)によって生産性が飛躍的に向上することが期待されています。著者は下記のように述べています。

「通常のオペレーション業務の生産性を向上→余裕時間を生み出す→その時間をイノベーションのために投資する→イノベーションにより、さらに大幅な生産性向上につなげる」ためにも、まずは組織全体に生産性を重視した働き方を定着させることが必要となるのです(P.51)。

しかし、業務の革新(イノベーション)というものが頻繁に生じるものではありませんし、業務の革新(イノベーション)が必ずしも生産性の飛躍的な向上に繋がるとは限らないということには注意を要します。本来、その不確定要素を考慮しても余裕時間を生み出すことの必要性は十分理解するところですが、人手不足の企業が多い中、そのような余裕時間を生み出すことが可能なのかという疑問も生じます。

働き方改革と生産性

「働き方改革」の論点の1つとして「長時間労働をなくすこと」が挙げられています。労働時間の削減は、生産性の式でいうところの分母を減らすことになります。しかし、分母を減らすことにより分子の成果も小さくなれば生産性は向上するどころか、逆に減少することになる可能性もあります。生産性の向上において大切なことは分子である成果を大きくすることなのです。著者は次のように述べています。

「労働時間が長すぎる→では労働時間を減らしましょう」というのもコインの裏返しです。そうではなく、「解くべき課題は生産性を上げることだ」と認識し、イノベーション(改革)や継続的なインプルーブメント(改善)を通して仕事の生産性を高めれば、結果として残業も労働時間も減少します(P.233)。

「働き方改革」のひとつとして提言されている同一労働同一賃金についても、下記のように言い切っています。

目指すべきは生産性の向上による総付加価値の拡大です。生産性を上げて成果の絶対量を増やし、その配分を通じて同一労働同一賃金を実現するのが、正しい道筋なのです(P.233)。

以前から気になっていた本だったのですが、いざ読み進めてみると非常に読みやすく、また「生産性」についてわかりやすく書かれています。私自身、労働時間の削減を中心とした「働き方改革」に少し疑問をもっていたこともあり、本書によってさらに「労働時間」ということよりも「生産性」というものの重要性を改めて感じ取ることができました。労働時間について著者は次のように述べています。

同じように全員が遅くまで忙しく働いている会社でも、その実態はふたつに分かれます。ひとつは「生産性が低い人が仕事に忙殺され、忙しく働いている会社」、もうひとつは「生産性が高い人が長時間働いているハイパワーな会社」です。一見すると両社はどちらも「全員が長時間働いている忙しい企業」にみえますが、それぞれの企業が達成できるレベルには大きな差が生まれてしまうのです。

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